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サンタクロースをいつまで信じていたかなんて事はたわいもない世間話にもならないくらいのどうでもいい話だが、それでも俺がいつまでサンタなんていう想像上の赤服じーさんを信じていたかというと、これは確信を持って言えるが、最初から信じてなどいなかった。 幼稚園のクリスマスイベントに現れたサンタは偽サンタだと理解していたし、おふくろがサンタにキスをしている所を目撃したわけでもないのにクリスマスにしか仕事をしないジジイの存在を疑っていた賢(さか)しい俺なのだが、はてさて、宇宙人や未来人や幽霊や妖怪や超能力者や、悪の組織やそれらと戦うアニメ的特撮的マンガ的ヒーロー達がこの世に存在しないのだということに気付いたのは相当後になってからだった。 いや本当は気付いていたのだろう。ただ気付きたくなかっただけなのだ。 俺は心の底から宇宙人や未来人や幽霊や妖怪や超能力者や、悪の組織が目の前にふらりと出てきてくれることを望んでいたのだ。 しかし、現実ってのは意外と厳しい! 世界の物理法則がよくできていることに感心しつつ、いつしか俺は、テレビのUFO特番や心霊特集をそう熱心に見なくなっていた。 宇宙人?未来人?超能力者?そんなのいるわけねぇ。でもちょっといてほしいみたいな、最大公約数的な事を考えるくらいにまで俺も成長したのさ。 |
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中学を卒業するころには、俺はもうそんなガキみたいな夢を見ることからも卒業して、この世の普通さにも慣れていた。 俺はたいした考えも無く高校生になり、そいつと・・・出会った |
| 「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。 この中に、宇宙人・未来人・異世界人・超能力者がいたら、私のところに来なさい。以上」 |
| 「・・・・・・・・・」 |
| これ、笑うとこ? |
| えらい美人がそこにいた |
| 「あ・・・はぁ・・・」 |
| 「ふん・・・」 |
| 「・・・ああ。では次」 |
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誰もが冗談だと思った。結果から言うと、それはギャグでも笑いどころでもなかった。 ハルヒはいつも大マジなのだ。 |
| こうして俺たちは出会っちまったぁ・・・。しみじみと思う。偶然だと信じたいと |
| ♪冒険でしょでしょ? |
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涼宮ハルヒは、黙ってじーっと座っている限りでは、一美少女高校生にしか見えなかった。 たまたま席が真ん前だったという地の利を生かして、お近づきになっとくのもいいかな〜と一瞬血迷った俺を、誰が責められよう。 |
| 「なぁ」 |
| 「ん」 |
| 「初っ端の自己紹介のアレ、どの辺りまで本気だったんだ?」 |
| 「・・・」 |
| 「・・・」 |
| 「初っ端のアレって何」 |
| 「いや、だから、宇宙人がどうとか・・・」 |
| 「・・・あんた宇宙人なの?」 |
| 「違うけどさ・・・」 |
| 「違うけどなんなの」 |
| 「ぅ、あぃや、なんもない」 |
| 「だったら話し掛けないで。時間の無駄だから。ふんっ」 |
| 「もしあいつに気があるんだったら、悪いことは言わん。止めとけ」 |
| 「中学で涼宮と三年間同じクラスだったから知ってるんだがな。あいつの奇人ぶりは常軌を逸してる」 |
| 「あの自己紹介?」 |
| 「そう。中学時代にもわけのわからん事を散々やり倒していたなぁ。有名なのが校庭落書き事件。」 |
| 「なんだそりゃ」 |
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「石灰で白線引く道具があるだろ?あれ何つーんだっけ?あ、まぁいいや。 それで校庭にでかでかとけったいな絵文字を書きやがった事がある。 しかも夜中の学校に忍び込んで。」 |
| 「その犯人があいつだったってわけか」 |
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「本人がそう言ったんだから間違いない。 朝教室に行ったら、机が全部廊下に出されていたこともあったなぁ。 校舎の屋上に星マークをペンキで描いたり、学校中に変なお札をベタベタ貼りまくられたこともあった」 |
■キョン |
「キョンシーが顔に貼っつけてるようなやつな」 何やってんだ・・・?こいつ・・・。 |
| 「意味わかんねぇよ・・・」 |
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「でもなぁ、あいつモテるんだよなぁ。なんせツラがいいしさ。 おまけにスポーツ万能で、成績もどちらかといえば優秀なんだ。 ちょっとばかし変人でも黙って立ってたらそんなことわかんねぇし」 |
| 「それにも何かエピソードがあるの?」 |
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「一時期はとっかえひっかえってやつだったなぁ。 俺の知る限り、一番長く続いて一週間。 最短では告白してOKした五分後に破局してた、なんてのもあったらしい。」 |
| 「普通の人間の相手をしてる暇は無いの!」 |
| 「・・・」 |
| 「・・・」 |
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「ん?い!ぁ!聞いた話だって!!マジで! なんでか知らねーけど、告られて断るってことをないんだよ、あいつは。 だからな。お前が変な気を起こす前に言っておいてやる。やめとけ。」 |
| やめとくも何も、そんな気は無いんだが |
| 「俺だったらそうだなぁ・・・。このクラスでの一押しは・・・アイツだな」 |
| 「ん?」 |
| 「朝倉涼子。一年の女の中でもベスト3には確実に入るね」 |
| 「一年の女子全員を、全員チェックでもしたのか?」 |
| 「おーぅよ!AからDまでランク付けして、そのうちAランクの女はフルネームで覚えたぜ」 |
| 「朝倉さんがそのAなわけ」 |
| 「AAランクプラスだな。あれはきっと性格までいいに違いない」 |
| 「うぅん・・・」 |
| 「はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!」 |
| 「はぁえぇぇ・・・」 |
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この時期、涼宮ハルヒもまだ大人しい頃合で、俺にとっても心休まる月だった。 しかしながら、ハルヒの奇矯な振る舞いはこのころから徐々に片鱗を見せていたと言うべきだろう。 |
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というわけで、片鱗その1ー。髪型が毎日変わる。 月、火、水、木、金。曜日が進むごとに髪を結ぶ箇所が増えている。 月曜日にリセットされた後は金曜日までひとつづつ。 果たして日曜日はどんな頭になっているんだ?見てみたい気もする。 |
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片鱗その2。体育の授業は男女別に行われる。 着替えは女が奇数クラス、男が偶数クラスに移動してすることになっているのだが、まだ男子が残っているのにもかかわらずやおらセーラー服を脱ぎだしやがった! どうやら、男子生徒のことはじゃがいもくらいにしか思ってないらしい。 |
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片鱗その3。呆れることに、ハルヒはこの学校に存在するあらゆるクラブに仮入部していたのだった。 運動部からは例外なく熱心に入部を勧められ、その全てを断って毎日参加する部活動を気まぐれに変えた挙句、結局どこにも入部することはなかった。 何がしたいんだろうなぁ、こいつはよぉ。 |
| そんなこんなをしながらゴールデンウィークが明けた一日目。 |
| 「よっ!キョーン」 |
| 「よ」 |
| ちなみに・・・、キョンってのは俺のあだ名だ。いい加減にやめてもらいたいのだが。 |
| 「あぁ、今日は水曜日か」 |
| などと考えつつ、魔がさしてしまったんだろう。それ以外に思い当たる節がない。 |
| 「曜日で髪型変えるのは、宇宙人対策か?」 |
| 涼宮ハルヒに話し掛けていた。 |
| 「いつ気付いたの?」 |
| 「うーん、ちょっと前」 |
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「あ、そう。・・・・・・私思うんだけど、曜日によって感じるイメージってそれぞれ異なる気がするのよね。 色で言うと、月曜が黄色。火曜が赤で、水曜が青で、木曜が緑。金曜が金色で、土曜が茶色。日曜は白よね」 |
| 初めて会話が成立したような気がする。 |
| 「なんとなくわかるような気もするが。つーことは数字にしたら、月曜日が0で日曜が6なのか」 |
| 「そ」 |
| 「俺は、月曜は1って感じがするけどなぁ」 |
| 「あんたの意見なんて誰もきいてない!」 |
| 「そうかい」 |
キョン |
「・・・」 「・・・」 |
| 「・・・」 |
| 「・・・」 |
| 「・・・」 |
| 「むぅ・・・」 |
| 「・・・」 |
| 「ん」 |
| 「・・・」 |
| 「うぅぅ・・・ん・・・」 |
| 「私、あんたとどこかで会ったことある?ずっと前に」 |
| 「いーや」 |
| 「はぁ」 |
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きっかけ。なんてのは大抵どうってことないものなんだろうけども、まさしくこれがきっかけになったんだろうなぁ。 しかし、ハルヒがまともな返答をよこしたことには驚きだ。 てっきり、うるさい・バカ・だまれ・どうでもいいでしょそんなこと、といわれるものばかりだと思っていたからなぁ。 |
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だから。ハルヒが翌日長かった髪をバッサリ切って登場した時には、結構俺は動揺した。 それにしたって、俺が指摘した次の日に短くするってのも短絡的過ぎないか?おい。 |
| 「ん。・・・別に」 |
| あれ以来。ホームルーム前のわずかな時間にハルヒと話すのは日課になりつつあった。 |
| 「ちょいと小耳に挟んだんだけどな。付き合う男、全部ふったって本当か?」 |
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「何であんたにそんな事言われなくちゃいけないのよ。 何を聞いたか知らないけど、まぁいいわ。たぶん全部本当だから」 |
| 「一人くらい、まともに付き合おうとか思うやつがいなかったのか」 |
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「全然ダメ。どいつもこいつもアホらしいほどまともなやつだったわ。 宇宙人でも未来人でも超能力者でもないし」 |
| そりゃ普通そうだろ。 |
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「あと、告白がほとんど電話だったのは何なのあれ!? そういう大事なことは面と向かって言いなさいよ!」 |
| 「まぁそうかなぁ。俺ならどっかに呼び出して言うが」 |
| 一応同意しておこう。 |
| 「そんなことはどうでもいいのよ!」 |
| どっちなんだよ |
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「問題はね。くだらない男しかこの世に存在しないのかどうなのってことよ。 ほんと。中学時代はずっとイライラしっぱなしだった。」 |
| 「じゃ、どんな男ならよかったんだ。やっぱり宇宙人か?」 |
| 「宇宙人。もしくはそれに準じる何かねぇ。とにかく普通の人間でなければ男だろうが女だろうが」 |
| 「どうしてそんなに人間以外の存在にこだわるんだ?」 |
| 「そっちのほうが、面白いじゃないの!」 |
| 「はぁ・・・」 |
| 「ん、んぁぁ・・・」 |
| 「おい、キョン!お前どんな魔法を使ったんだ?」 |
| 「何の話だ?」 |
| 「俺涼宮があんなに長い間しゃべってるの初めて見るぞ。お前何言ったんだ」 |
| さて何だろう。適当なことしか聞いていないような気がするんだが・・・ |
| 「驚天動地だ」 |
| 「昔からキョンは変な女が好きだからね〜」 |
| 「誤解を招くようなことを言うな」 |
| 「わたしも聞きたいな」 |
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「わたしがいくら話しかけてもなーんにも答えてくれない涼宮さんが、どうしたら話すようになるのか。 コツでもあるの?」 |
| 「・・・。わからん」 |
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「ふーん。でも安心した。涼宮さん、いつまでもクラスで孤立したままじゃ困るもんね。 一人でも友達ができたのはいいことよね」 |
| 「友達ねぇ」 |
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「その調子で涼宮さんをクラスにとけこめるようにしてあげてね。 せっかく一緒のクラスになったんだから、みんな仲良くしていきたいじゃない? よろしくね」 |
| と、言われてもな。 |
| 「これから何か伝えることがあったら、あなたから伝えてもらうようにするから」 |
| 「うぅぅぅん、っだが待てよ!俺はあいつのスポークスマンでもなんでもないぞ!」 |
| 「おねがい」 |
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席替えだそうだ。 ゴーフルの缶に入れられたクジを引いた俺は、窓際後方二番目というなかなかのポジションを獲得した! さらばハルヒ〜。フォーエバ〜。 |
| 偶然だよな。 |
| 「全部のクラブに入ってみたってのは本当なのか?どこか面白そうな部があったら教えてくれよ」 |
| 「無い。全然」 |
| 即答しやがった。 |
| 「全然無い!」 |
| どうやらこいつの口癖は、"全然"のようだ。 |
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「高校に入れば少しはマシかと思ったけど、これじゃ義務教育時代となんも変わんないわね。 入る学校間違えたかしら」 |
| 何を基準に学校選びをしているのだろう。 |
| 「ミステリ研究会ってのがあったのよ。」 |
| 「へぇ。どうだった」 |
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「笑わせるわ。今まで一回も事件らしい事件に出くわさなかったって言うんだもの。 部員もただのミステリ小説オタクばっかで、名探偵みたいなやつもいないし。」 |
| 「そりゃそうだろ」 |
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「超常現象研究会にもちょっと期待してたんだけど、ただのオカルトマニアの集まりでしかないのよ。 どう思う!?」 |
| 「どうも思わん」 |
| 「んぁ〜もう!つまんな〜い!!これだけあれば少しは変なクラブがあってもよさそうなのに」 |
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「無いもんはしょうがないだろう? 結局のところ、人間はそこにあるもので満足しなければならないのさ」 |
| 「・・・」 |
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「言うなれば、それをできない人間が発見や発明やらをして、文明を発達させてきたんだ。 空を翔びたいと思ったから飛行機作ったし、楽に移動したいと思ったから車や列車を生み出したんだ。 でもそれは一部の人間の才覚や発想によって初めて生じたものであり、つまり、天才がそれを可能にしたわけだ。 凡人たる我々は人生を凡庸に過ごすのが一番であってだな・・・」 |
| 「うるさい!」 |
| 「ん?」 |
| 「ふんっ」 |
キョン |
「・・・」 「・・・」 |
| もしかしたら、この会話がネタ振りだったのかもしれない。 |
| それは突然やって来た。 |
| 「んはっ!」 |
| 「うぅぉぉぉあっ!!んがっ!はっ!はぅ〜ん」 |
| 「何しやがる!!」 |
| 「気がついた!!」 |
| 「何に・・・」 |
| 「どーしてこんな簡単なことに気がつかなかったのかしら!」 |
| 「何が」 |
| 「無いんだったら自分が作ればいいのよ!」 |
| 「だから何を」 |
| 「部活よ!!」 |
| 「ああぁ・・・」 |
| 「わかった。まー今は落ち着け」 |
| 「何その反応。もうちょっとあんたも喜びなさいよ、この発見を」 |
| 「は。今は授業中だ」 |
| 「あはははは・・・・・・・・・」 |
| 「ん〜」 |
| 「あ〜!ちょっこら!あ〜!あ〜!」 |
| 「協力しなさい」 |
| カツアゲされてるような気分だぜ。 |
| 「何を協力するって?」 |
| 「あたしの新クラブ作りよ」 |
| 「なぜ俺がお前の思いつきに協力しなければならんのか、それをまず教えてくれ」 |
| 「あたしは部室と部員を確保するから、あんたは学校に提出する書類を揃えなさい」 |
| 聞いちゃいない・・・。 |
| 「何のクラブを作るつもりなんだ?」 |
|
「どうでもいいじゃないのそんなの!とりあえずまず作るのよ! いい?今日の放課後までに調べておいて。あたしもそれまでに部室を探しておくから!いいわね?」 |
| 「いいっ!?また!ちょっと待てっ!」 |
| 「んっ!」 |
| 「これからこの部屋が我々の部室よ!」 |
| 「ちょい待て。どこなんだよここは。」 |
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「文化部の部室棟よ。美術部や吹奏楽部なら美術室や音楽室があるでしょ? そういう特別教室を持たないクラブや同好会が集まってるのがこの部室棟。通称"旧舘"。 この部屋は文芸部!」 |
| 「じゃあ文芸部なんだろ?」 |
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「でも今年の春に3年生が卒業して、部員0。 新たに誰かが入部しないと休部が決定していた唯一のクラブなのよ。で、この子が一年生の新入部員。」 |
| 「・・・」 |
| 「じゃあ、休部になってないじゃないか」 |
| 「ふん。似たようなもんよ!一人しかいないんだから」 |
| 「あの子はどうするんだよ?」 |
| 「別にいいって言ってたわよ?」 |
| 「本当かそりゃ」 |
| 「昼休みに会ったときに"部室貸して"って言ったら"どうぞ"って。本さえ読めればいいらしいわ」 |
| 「変わってるといえば変わってるわね」 |
| ハイ。お前が言うな。 |
| 「長門有希」 |
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「長門さんとやら。こいつはこの部屋をなんだかわからん部の部室にしようとしてんだぞ。 それでもいいのか?」 |
| 「いい」 |
| 「あいやー、しかし!たぶんものすごい迷惑かけると思うぞ〜」 |
| 「別に」 |
| 「そのうち、追い出されるかもしれんぞ?」 |
| 「どうぞ」 |
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「ふふーん。っま!そういうことだから!これから放課後この部屋に集合ね! 絶対来なさいよ?来ないと死刑だから!!」 |
| 「わかったよ」 |
| 死刑は嫌だからな。 |
| で、次の日。 |
| 「先に行ってて!」 |
| 「・・・」 |
| 「何、読んでんだ?」 |
| 「・・・」 |
| 「面白い?」 |
| 「・・・・・・ユニーク」 |
| 「どういうとこが?」 |
| 「・・・・・・全部」 |
| 「本が、好きなんだなぁ」 |
| 「・・・・・・割と」 |
| 「そ、そうか」 |
長門 |
「・・・」 「・・・」 |
| 帰っていいかなぁ、俺。 |
| 「ん!」 |
| 「やぁ〜、ごめんごめん遅れちゃって。捕まえるのに手間取っちゃって」 |
| 「ひえぇぇ、ふぅぅん」 |
| またしても少女だった。しかもすんんげぇ美少女だった。 |
| 「なんなんですか・・・?ここ、どこですか・・・?何で私連れてこられたんですか?」 |
| 「なんで、か、か、鍵を閉めるんですかぁ!?一体何を」 |
| 「黙りなさい」 |
| 「んきゅ・・・」 |
| 「紹介するわ!朝比奈みくるちゃんよ!」 |
| 「はぁ」 |
| 「はわわわぁ」 |
| 「・・・」 |
| 「ふぅん」 |
| 紹介、終わりかよ |
| 「どこから拉致ってきたんだ?」 |
| 「そんなことしないわ。任意同行よ」 |
| 「似たようなもんだ」 |
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「2年の教室でボンヤリしてるところを捕まえたの。 あたし休み時間には校舎を隅々まで歩くようにしてるから、何回か見かけて覚えてたわけ」 |
| 休み時間教室にいないと思ったら、そんなことしていたのか・・・。 |
| 「あ、じゃこの人は上級生じゃないか」 |
| 「それがどうかしたの?」 |
| 「まあいい。ええと・・・朝比奈さんか。なんでまたこの人なんだ」 |
| 「まあ見てごらんなさいよ。」 |
| 「ひっ!ぅん?」 |
| 「めちゃめちゃ可愛いでしょう!?」 |
| 危ない誘拐犯のようなことを言い出した。 |
| 「あたしね、萌えってけっこう重要なことだと思うのよね」 |
| 「・・・・・・。すまん。何だって」 |
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「萌えよ!萌え!いわゆる一つの萌え要素! 基本的にねなにかおかしな事件が起こるような物語にはこういう萌えでロリっぽいキャラが一人はいるものなのよ!」 |
| ふぅん・・・。 |
| 「あ・・・」 |
みくる |
「それだけじゃないのよ!ふっ」 「ふゎぁ」 |
| 「へ?どひぇえええ!」 |
みくる |
「ちっこいくせにもほら、あたしより胸でかいのよ!ロリ顔で巨乳。これも萌えの重要要素の一つなのよ!」 「ふぁ!ふぁ!ふゎぁああ!」 |
| 知らん。 |
| 「あー、ホントにおっきいなー。なんか腹立ってきたわ。こんな可愛らしい顔してあたしよりおっきいなんて!」 |
| 「・・・」 |
| 「アホかお前は」 |
みくる |
「でもめっちゃデカイのよ?マジよ?あんたも触ってみる?」 「はうぅ」 |
| 「ひっ!」 |
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「遠慮しとく。すると何か? お前はこの・・・朝比奈さんが可愛いくて小柄で胸が大きかったからという理由なだけでここに連れてきたのか?」 |
| 「そうよ!」 |
| 真性のアホだ、コイツ。 |
| 「こういうマスコット的キャラも必要だと思って。」 |
| 「みくるちゃん。あなた他に何かクラブ活動してる?」 |
| 「あの・・・、書道部に・・・」 |
| 「じゃあそこ辞めて。我が部の活動の邪魔だから」 |
| 「!」 |
| 「・・・・・・ぁ・・・・・・あ!」 |
| 「・・・」 |
| 「あ!そっか・・・。わかりました」 |
| 何がわかったんだろう |
| 「書道部は辞めて、こっちに入部します。でも!文芸部って何をするところなのかよく知らなくて」 |
| 「我が部は文芸部じゃないわよ」 |
| 「え?」 |
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「ここの部室は、一時的に借りてるだけです。 あなたが入らされようとしているのは、そこの涼宮がこれから作る活動内容不定で名称不明の同好会ですよ」 |
| 「ちなみにあっちで座って本を読んでるのが、本当の文芸部員です」 |
| 「はぁ」 |
| 「大丈夫!名前ならたった今考えたから!」 |
| 「・・・言ってみろ」 |
| 皆の衆お知らせしよう。新しく発足するクラブの名前は今、ここに決定した! |
| 「SOS団!!」 |
| 「!」 |
| 「!」 |
| 「・・・」 |
みくる 長門 |
「・・・」 「・・・」 「・・・」 |
| "世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団"。略してSOS団である。そこ、笑っていいぞ。 |
| 本来なら、"世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの同好会"とでもすべきなんだろうが、何しろまだ同好会の体(てい)すらなっていないうえに、何をする集団なのかも分からないのである。 |
| 「だったら団でいいじゃない!」 |
みくる 長門 |
「・・・」 「・・・」 「・・・」 |
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意味不明なハルヒの一言により、めでたくそのように決まった。 好きにしろよ・・・もう・・・。 |
| ♪ハレ晴レユカイ |
| 「次回、涼宮ハルヒの憂鬱第2話!」 |
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「違う。次回、涼宮ハルヒの憂鬱第3話。涼宮ハルヒの憂鬱U。 少しは人の話聞きなさい。お楽しみに」 |